古墳コラム

古墳の魅力って? さまざまな方に古墳にまつわる思い出や世界遺産登録への思いについてインタビューします!
今回は、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録推進民間会議の橋爪紳也委員長です。

百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進民間会議 橋爪紳也委員長

プロフィール
京都大学工学部建築学科卒、大阪大学大学院博士課程修了。大阪市立大学教授などを経て現職(兼教授)。大阪府政策アドバイザー、大阪府・市特別顧問。
白石太一郎

まちに息づく文化から都市の歴史を見つめる

私の専門は都市政策や都市文化ですが、歴史的な研究の史料として、戦前期に発行された広告や絵葉書、ガイドマップなどを活用しています。都市の歴史を考察する上では、古文書や記録などとともに、当時の人が実際に手に取って使っていたものが重要だと思うんです。
きっかけは、大学生のとき、卒業論文のためのフィールドワークで、京都の伏見の城下町や町屋を訪れたときに、あるお宅で見せていただいた古い絵葉書。その絵葉書には桃山御陵へ参拝する様子が描かれており、昭和初期、御陵が参拝の対象として身近な存在であったことを窺い知ることができました。
また、建築という視点から古墳の築造にも興味を抱き、五色塚古墳(神戸市垂水区)にもよく通いました。行かれたことがある方はご存知と思いますが、五色塚古墳では、古墳を築造当時の姿に復元していて、墳丘の表面に石(葺石、ふきいし)を敷きつめ、円筒埴輪を並べており、古墳の大きさやスケールを体感することができます。
天気の良い日などは、葺石がきらきらと光り、その立地から海からの眺めを意識して造られたことが想像できます。1500年以上も前にこのような巨大なものが造られたということに感動を覚えますが、百舌鳥・古市の地には現在も89基の古墳が守られてきており、非常に貴重な歴史資産であると思います。

※五色塚古墳の姿は、こちらからご覧ください。

マイコレクション!?

少し私のコレクションをご紹介します。これらは、大阪鉄道(現在の近畿日本鉄道)が発行していたハイキングマップや、御陵巡拝のための冊子などです。たとえば、ハイキングマップの羽曳野周辺を紹介するページを開いてみると、小さくてわかりにくいかも知れませんが、御陵の地図記号がたくさん書かれています。昨年、推進本部会議でも「百舌鳥・古市古墳群ウォーキング・マップ」がつくられましたが、当時も御陵をめぐるための地図がつくられていて、健脚な方向けのコースや、家族でハイキングに出かけるためのコース、御陵巡拝を主にしたコースなど設定されていたりします。
こういった資料は、大正期から昭和初期につくられたものが多いのですが、当時の人々がどのように古墳を見つめ、その地を訪れていたか、さまざまな発見をもたらしてくれます。

※「百舌鳥・古市古墳群ウォーキング・マップ」は、こちらからご覧ください。

橋爪委員長からのメッセージ

私たちがこの時代に生きているというのは、

前の世代があってこそだと思います。

百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録運動もその延長線上に

あると考えています。

これまで守られ、まちの歴史とともに受け継がれてきた資産を

次の世代に引き続くことが現代に生きるわれわれの

使命ではないでしょうか。

我々の誇りである百舌鳥・古市古墳群を世界の宝にしたいですね。

橋爪紳也コレクションの一部
昭和初期、大阪鉄道発行の冊子で古墳群を
巡るハイキングコースが案内されていました
推進本部会議が作成した
「百舌鳥・古市古墳群ウォーキング・マップ」
(平成24年発行)
近畿を中心に天皇陵を一望する、昭和3年発行の「歴代御陵巡拝図会」
(橋爪紳也コレクション)