古墳コラム

古墳の魅力って? さまざまな方に古墳にまつわる思い出や世界遺産登録への思いについてインタビューします! 今回は、堺市で、古墳をキレイにする活動に取り組む2組の高校生のみなさんにお話をうかがいました。

大阪府立堺工科高等学校エコデザイン同好会、堺市立堺高等学校生徒会

細見克、中屋麗子、小野常芳

もっと知りたい、古墳のこと! 好奇心と地元愛を「浄化船」に乗せて

堺市北区にある墳丘長146mの前方後円墳・いたすけ古墳。
昭和30年ごろ、宅地開発で破壊の危機にあいましたが、市民を中心とした運動で保存されることになった、“地元愛に守られる”古墳です。
現在、このいたすけ古墳のお濠では、大阪府立堺工科高等学校のエコデザイン同好会が水質の調査と浄化活動に取り組んでいます。
「堺市内には古墳がたくさんあるので、僕たちにとっては慣れ親しんだ風景。普段は入れない古墳の中で活動できると聞いて、興味がわきました。」とメンバーのみなさんは話します。
エコデザイン同好会が設立されたのは約3年前。
まず、調査対象の古墳を選びました。
古墳のお濠が外部とつながっていて水の出入りがある場合、水質が改善されたとしても効果の原因が特定しづらいため、古墳のお濠に水の流入がない、いたすけ古墳を調査することになりました。
顧問のひとり・小寺先生は「古墳ですから、生物を入れたり、化学薬品を使ったりするわけにもいきません。それならば、水の中に酸素を送り込むエアレーション法しかない。
浄化活動と調査結果を検証することで、生徒たちの"考える力"にもつながるのでは?と考えました。」と当時を振り返ります。
こうして、先生たちの設計図をもとに作られたのが、写真右の「浄化船」。
「浄化船の仕組みは、ソーラーパネルを動力源として、ポンプを使ってお濠の深層部に空気を送りこむというもの。
お濠の深層部は光が届きにくく、酸素が少ない状態です。
酸素を送り込むことで水中の微生物を活性化させ、有機物の分解を促します。」「ソーラーパネルを使うことで“電気”の知識が、設計には“機械”の知識が、調査そのものは“環境”の知識が必要だったので、とても勉強になっています。」。
そうして、プールでの実験や改良を重ね、平成25(2013)年9月、ついに浄化船が稼動しました。
浄化船の取り組みについては、「普段、水質調査は4つのポイントで行っているのですが、そのうちの1つのポイントに浄化船を設置しました。実施前と実施後では水中の有機物量に変化がありました。
授業でする実験には答えがあるんですが、実際の取り組みには答えがないので、試行錯誤しながら“答え”を探すのが楽しいです。」と生徒のみなさんは話します。
まだまだ活動はスタートしたばかりですが、「取り組みを知ってもらうことで“キレイにしたい”と考える人が増えたらうれしい。」と意気込むエコデザイン同好会のみなさん。
そのまなざしは未来を見つめていました。

堺と言えば、仁徳天皇陵古墳! 世界に自慢できる美しい古墳に

日本最大の仁徳天皇陵古墳の周りで年2回行われている「仁徳陵をまもり隊」の清掃ボランティア活動に、ジャージに身を包んだ高校生の姿が。
平成20年3月からこの活動に参加している堺市立堺高等学校のみなさんです(当時は堺工業高等学校として参加)。
堺市立堺高等学校は生徒会活動が活発で、「仁徳陵をまもり隊」の清掃活動も、生徒会の呼びかけによってたくさんの生徒が参加しています。「いまや堺高校の恒例行事のひとつなんですよ。」
清掃活動の主な内容は、エリア毎に分かれて仁徳天皇陵古墳の外周やお濠のごみ拾いです。
「参加するまでは、本当にごみがあるのかなと思っていましたが、参加してみると結構ごみがありました。でも、大勢でする清掃活動は清々しくて、他のボランティアさんとも交流しながらなので楽しくやりがいを感じます。」
この日集まった生徒会のみなさんは全員堺市出身。
「古墳は小さい頃から近くにあって、小学生の時は遠足に行ったり、運動部の部活動では古墳の周囲を1周したりと、私たちにとって身近な存在です。」「最近では海外からの観光客の姿も見かけるので、外国の人にも“キレイ”と思ってもらえたらうれしいです。」と話します。
その一方で、訪れる方だけでなく、地元に暮らす方々に対して思いをもつメンバーも。
「私たちの姿を見かけることで、清掃活動に参加する人や、普段からゴミを減らそうと思う人が増えればうれしい。」「包丁やお茶だけでなく、古墳も堺の宝。世界遺産に登録されればたくさんの人が訪れるようになるので、市民の意識も高くなるだろうし、ゴミも減るんではないかと思います。」と力強く話します。

  • 約2m四方の浄化船は平成25年9月から12月の3か月間稼動。「秋から冬にかけては日照時間が短いので、ソーラーがうまく動かないことも。次は春・夏にチャレンジしたい」とメンバー。上の写真は、水質調査の様子。
  • 土手での作業は、周濠に落ちないように体に綱をつけます。顧問の小濱先生ともやい結びの練習をする生徒会のみなさん。写真下は清掃活動の必需品・綱と軍手