- 写真のガラス碗(わん)は、大阪府羽曳野市(はびきのし)にある安閑天皇陵古墳(あんかんてんのうりょうこふん)から出土したと伝わっています。
これは、6世紀ごろのササン朝※ペルシア(現在のイランやその周辺)でつくられたと考えられていて、奈良県の正倉院(しょうそういん)にある白瑠璃碗(しろるりわん)と、大きさ、成分、切子(きりこ)のデザインまでほぼ一致しているので、同じ工房で同じ時期につくられた可能性が高いと言われています。
当時の日本にはこのようなガラスの器をつくる技術はなかったので、シルクロードをとおって中国や韓国に伝わったものが日本に渡ってきたと考えられています。
このガラス碗は、ペルシアで出土しているものと比べても、最上級の部類に入るもので、国の重要文化財にもなっています。
※ササン朝…3世紀はじめから7世紀半ばのペルシア(現在のイランとその周辺)の王朝(226~651年)。
- シルクロードとは、東洋(アジア)と西洋(ヨーロッパ)の2つの世界をつなぐ大きな道です。
シルクロードは、「絹の道」という名前のとおり、中国から中東やヨーロッパに絹が伝わりました。
それ以外にも、鉄、革製品などが東から西へ、毛織物(けおりもの)、金製品、金貨、ガラスなどが西から東へ、そして、文化や技術などは相互に交流していたと考えられています。
日本はその終着点で、中国や韓国をつうじて、西洋の品や文化が伝わったと考えられています。
有名なのは、奈良県斑鳩町(いかるがちょう)にある、世界遺産の法隆寺(ほうりゅうじ)です。
このお寺は飛鳥時代(7世紀ごろ)につくられたものですが、廊下の柱は、中央部にふくらみがある「エンタシス」という様式です。
これは、ギリシャにあるパルテノン神殿※の柱とそっくりで、古代ギリシャの柱の形がシルクロードをとおってアジアへ、そして中国・韓国をつうじて日本に伝わったのではないかと考えられています。
壮大(そうだい)な歴史ロマンを感じますね。
※パルテノン神殿…紀元前5世紀に建てられた、ギリシア神話の女神アテーナーをまつる神殿。